私は散髪に行くのが好きです。
もちろん、伸びた髪を切ってさっぱりするのも好きですが、それ以上に、散髪屋さんの話を聞くのが好きなのです。
散髪をしてもらいながら話を聞いていると、住んでいる町に起きていることや住んでいる人たちのことがいろいろとわかります。
先日は、しばらく空きスペースだった駅ビルにチョコレートの店がオープンしたことや、知り合いの家の近くに飲茶の店ができたりしたことを知って、散髪の帰りにわざわざ遠回りして様子を見に行きました。
町に住んでいる人のことも話題になって、ある人は家の一番良い部屋に保護犬のための小屋を作っているという、嘘のような本当の話を聞くこともあります。
個人的な話をしているようで、批判的な内容や立ち入った話を上手に避けているのがわかります。
それも、話題になっている人や出来事の良い部分に目を向けながら話しています。
その話しぶりが温かく、しかも良い話ばかりです。
それも、楽しそうに話すのです。
人を非難するような話だと、聞くのがイヤになってしまいやすいのですが、そのような良い話だと聞いている自分も楽しくなれます。
そのおかげで、場の雰囲気が温かくなって、ほかの地元客も自分の知っている情報を話します。
知らない人と話すのが苦手な私も、いつの間にか会話の輪に加わって、私の家のまわりで起きていることを話したりもしています。
このように、無理なエネルギーを使わないで話ができる温かい雰囲気を作る散髪屋さんのコミュニケーション力はたいしたものだと、感心します。
人が好きなのでしょう。
良い意味での人間的な好奇心があるので、その場が温かくなりますし、お互いが自由に話し合えるようになるのです。
そうしているうちに、そこにいる人たちの心が温かくなり、その町に住んでいるという所属感が生まれてきます。
こうしたコミュ力は、私たちがそれぞれ自分らしく生きていくために何よりも大事で、それを身につけたいと思いながら理髪店に通っている私がいます。