こころトーク

2022.07.15

第355回 「じつは大きな非言語的コミュニケーションの役割」

今回は、非言語的コミュニケーションについて書くことにします。

まだ私が若かったころ、精神分析の恩師だった小此木啓吾先生からウィルヘルム・ライヒという精神分析家の話を聞いたことがあります。

ライヒ先生は、性格の鎧(よろい)という考え方で知られた精神分析家です。

一般にはノイローゼとも言われていた神経症は、その人が特有の性格の鎧(よろい)をまとっているためだという考え方です。

ライヒ先生は、その性格の鎧(よろい)のために、いろいろな出来事に出会ったときに柔軟な対応ができなくなって、うつや不安などの精神面の症状が出てくると考えていました。

私も本格的に勉強したわけではないので詳しくは説明できないのですが、今回はその理論の内容ではなく、それに対するライヒ先生の治療法について説明していきたいと考えています。

ライヒ先生の話し方がとても強烈だったと聞いているからです。

話し方というよりは言葉づかいと言った方が正確でしょうか。

とにかく、面接の中で、悩んでいる人の性格がいかに問題かを厳しく指摘していったといいます。

そう聞くと、悩んでいる人は傷ついて、ライヒ先生には二度と会いたくないと考えたのではないかと考えます。

ところが、そうではなかったのです。

ライヒ先生の治療はとても人気で、話を聴いてほしいという人がとても多かったそうです。

その理由は、ライヒ先生の雰囲気や態度にあったといいます。

ライヒ先生は、まわりの人たちからチャーマーと言われていたそうです。

文字通り、チャーミングな人という意味です。

温かくチャーミングな雰囲気があったために、厳しい言葉で指摘されても、相談している人の心に響いたというのです。

もちろん、その指摘が的を射ていたということもあるのでしょう。

しかし、それ以上に態度や雰囲気、人間関係などいわゆる非言語的コミュニケーションが会話で大きな役割を果たしていたのです。

だからこそ、小此木先生は精神科医として勉強中の私にこのような話をしてくださったのだと思います。

ライヒ先生のこうした態度や雰囲気は、私たち精神科医にとって大切なだけでなく、人とのつながりを大事にする誰にとっても大切だと考えています。

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