先週は、平中というプレイボーイに上手に対応した平安時代の女性の話を紹介しました。
「せめて、読んだという返事だけでも欲しい」という手紙に対して、「読んだ」という部分だけを破り取って送り返したという内容です。
私たちは、問題に直面して解決に行き詰ったとき、ひとつの考えにとらわれていることがよくあります。
そのときに、その状態から距離を取って問題を見つめ直してみると、新しい解決策が浮かんできます。
平中の例で言えば、「読んだという返事だけでも欲しい」と書かれると、「返事を書いた方が良いかどうか」と考え、その迷いにとらわれてしまいます。
どのようなことを書いたとしても、その手紙を良いように使われてしまう可能性があります。
ここで悩むのは、「自分が書かないといけない」と考えているからです。
そのことに気づいた女性は、自分が返事を書かない方法、つまり、「読んだ」と平中が書いた部分を破り取って送り返す方法を思いつきました。
別の可能性もあります。
これまで、その女性が自分で返事をする前提で考えてきましたが、他の人に頼むという方法も考えられます。
手紙を出すという縛りから自由になって、親しい人に頼んで返事を伝えてもらうようにするのです。
このように、いろいろな可能性が考えられる場面で、「自分が手紙を書いて返事をしなくてはならない」と考えてしまうと、行き詰ってしまいます。
こうしたときには、問題解決の基本法則である「数の法則」を意識すると良いでしょう。
「数の法則」というのは、できるだけ多く、思いつくかぎりの解決策を考え出すようにしようという考え方です。
「判断遅延の法則」と言いますが、良いか悪いかは後回しです。
ある解決策が良いか悪いかは、解決策が全部出そろったところで判断すれば良いですし、その方が簡単です。
このようにして選んだ解決策を試してみて、それでうまくいけばそれに越したことはありません。
仮にうまくいかなくても、次の候補の解決策を試してみれば良いだけです。