こころトーク

2022.10.21

第369回 「あきらめの気持ちが強くなるときほど大事なこと」

あと3週間で、私が理事長をしている日本認知療法・認知行動療法学会が開催されます。

今回は、ポジティブサイコロジーの考えも取り入れた新しい認知行動療法の、「リカバリーを目指す認知療法」に関係した発表や報告が多く行われることになっていて、私はとてもワクワクしています。

今回のメインテーマは「デジタル × 人の温かみ」で、「こころのスキルアップ・トレーニング」やYouTubeチャンネル「こころコンディショナー」を提供している私にとってとても魅力的です。

私は、デジタルツールだけでこころのケアをするのは難しく、人の支援があって初めて効果的な支援ができると考えていて、その両方を効率的、統合的に使うのが大切だと考えています。

そのときに大切なのが、それぞれの人の強みを生かすポジティブサイコロジーの考え方です。

今回の学会には、アーロン・ベック先生と一緒に「リカバリーを目指す認知行動療法」を開発、発展させてきたポール・グラント先生が、講演やシンポジウム、ワークショップを行います。

私たちは現在、アーロン・ベック先生の遺作にもなった『リカバリーを目指す認知療法』の翻訳をしています。

出版は来年になると思いますが、これは、重篤な精神疾患のために長期に入院している人に対する認知行動療法を説明した書籍です。

こうした人たちを支援する認知行動療法という発想自体が、私にとっては新鮮な驚きでした。

20年、30年と長く入院していると、その人自身はもちろんのこと、家族や友人、そして医療スタッフもあきらめの気持ちが強くなってきます。

退院することだけでなく、その人が自分らしい生き方をすることなど無理だとあきらめてしまっているのです。

あきらめは、精神疾患に苦しんでいる人にも伝わり、変化しようという気持ちなど、消えていってしまいます。

そうしたときに大事になるのはアーロン・ベック先生たちがアスピレーションと呼ぶ、それぞれの人が大事にしているささやかな個人的夢です。

こうした夢を大切にすることは、精神症状に苦しんでいるかどうかに関わりなく、私たち誰にとっても大切なことだと、私は考えています。

▼YouTubeチャンネル「こころコンディショナー」
https://www.youtube.com/channel/UC47pR36mUzgu8IkToQqtGtQ

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