こころトーク

2022.12.09

第376回 「その体験をどういかしますか?」

サッカーワールドカップのカタール大会で日本が大活躍をしました。

一次リーグの組み合わせをみて、リーグ突破は難しいのではないかと考えた人は少なくなかったと思います。

しかし、そうした予想を覆して、ドイツを破り、スペインを破り、決勝リーグにまで進みました。

その快進撃に多くの日本人が興奮しました。

大会が始まる前に、「グッドルーザーはもう良い。ウィナーになる」と言っていた選手の言葉を思い出します。

さわやかに負けるのではなく、勝ちを取りに行くという強い思いを表現した言葉です。

それまでの練習を通して身につけた技量に加えて、そうした思いがあったからこそ、決勝リーグにまで進めたのだと思います。

しかし、決勝リーグのクロアチア戦は残念な結果に終わりました。

同点でPK戦にまでもつれ込みましたが、勝ちきることはできませんでした。

勝負は時の運、日本チームはよく頑張ったと私は考えています。

多くのサポーターも同じ気持ちだと思います。

一方、選手や監督は残念な思いをしているかもしれません。

強豪チームに勝って一次リーグを突破したとしても、「(ベスト8に進出して)これまでの景色を変える」と言って頑張ってきました。

その夢を実現できなかったのですから、残念な思いになったとしても不思議はありません。

個人的な体験ですが、大学生時代に空手の大会に選手の一人として出場して負けたときのことは、いまでも覚えています。

武道館でベスト8に残った体育会のチームの一員として医学部生として初めて選ばれて戦えたという誇らしい気持ちもあったのですが、負けたことでその気持ちはどこかに飛んでいってしまいました。

ただ、時間が経つうちに、負けた悔しさや残念さは薄まっていって、仲間と一緒に試合に出ることができたうれしさの方が強くなってきました。

私たちは、生きていく中で、良いこと、良くないこと、いろいろと体験します。

しかし、“良い”か“良くない”かは、そのときの判断で、それは時間とともに変わってきます。

その体験をどういかすかは、それぞれの人の体験との向き合い方で変わってくると、私は思っています。

前の記事 次の記事