先週後半は、研修会や講演会のために愛媛県に行ってきました。
愛媛県は私の出身地なので、毎年12月に一緒に勉強する機会をいただいています。
私にとっても刺激になる集まりなのですが、その話し合いのなかで、認知行動療法の考え方を使ってこころを整えようとするときに陥りやすい、ひとつの「あるある」があることに気づきました。
認知行動療法では、悩んでいるときに心に浮かんでいる考えに目を向けようと言われます。
そう言われると、つらかった過去のある場面を思い出して、そのときの考えに目を向けたくなります。
その考えをどのように変えれば、そのときもっとうまく対応できたかを振り返ってみたりします。
しかし、その結果、つらくなってくることがよくあります。
あのときこのように考えて、こう行動すれば良かったのではないかと、あれこれ考えるためです。
考えに目を向けようとすればするほど、そのときの考えから離れられなくなります。
それでは、先に進むことができません。
同じところをグルグル回って、エネルギーを消耗してしまうだけです。
認知行動療法で勧めているのは、そうした過去の考えに目を向けることではありません。今その瞬間に浮かんでいる考えやイメージなのです。
「あんなことをした自分はダメだ」と考えているとすれば、その考えに目を向けるようにします。
「ダメだ」と考えたとすれば、何がダメなのか。
どうすればもっと良い方向に進むことができるのか。
それを考えて、先に進む工夫をするのです。
それでも、私たちは、失敗にとらわれて先に目を向けられないことがあります。
そうしたときには、考えに目を向けるのを意識的に止めて、積極的に行動することが役に立ちます。
室内でちょっと身体を動かしたり、好きな音楽を聴いたり手芸をしたりすると、考えから距離を取ることができます。
外に出て少し歩いたりしても良いでしょう。
このように考えに目を向けない工夫が必要になることも少なくないことを、今回の研修で話しました。