前回、考えに目を向けることがかえって心を不安定にする可能性があることについて書きました。
あれこれ考えて、現実に目を向けられなくなるからです。
問題に対処しなくてはならないはずなのに、いつの間にか問題から目をそらすようになってしまっているのです。
このように考えが頭のなかでグルグルまわっている状態を、専門的には反すうと呼びます。
牛が食べ物を口ですりつぶし、胃に送って、また口に戻して、また胃に送る反すうと同じ意味です。
そのようなときには、まず考えを止める必要があります。
まず、頭に浮かんでいる考えに目を向けて、それが工夫につながっていればそのまま考えを続けます。
しかし、同じところをグルグルまわっているときには、その考えを半ば強制的に止めるようにします。
それには、前回紹介したように、行動が役に立ちます。
そのときに、過去の良い体験を細かく思い出しても良いでしょう。
良い体験をしたその場面にいるかのように、細かく、細かく思い出すと、そのときの気持ちがよみがえってきて、反すうを止めることができます。
そのうえで、今良くないことが起きている場合には、どのような工夫ができるかを考えるようにします。
失敗した過去を変えることはできません。
しかし、失敗は成功のもとです。
過去の失敗を振り返って、これからどうすれば良いかを考えて、その工夫を生かすことはできます。
それに、失敗したからといって、これから先も同じように失敗続きになると決まったわけではありません。
サッカーのワールドカップでコスタリカに負けた後、森保監督が、過去を変えることはできないが、将来を作ることはできるという趣旨の発言をしたことがニュースになりました。
その言葉通り、分が悪いとされていたスペイン戦で勝利して、決勝リーグに進出することができました。
ドーハの歓喜のおかげで、選手や監督だけでなく、応援している私たちも良い体験をすることができました。