先日、アメリカ留学時代から交流のあるアレン・フランセス先生夫妻とオンラインで話をしました。
新型コロナには、私たち誰もがずいぶん苦しめられましたが、このように気楽にオンラインで交流できるようになったのは良かったと思います。
以前にも書いたように思いますが、デジタル移民と呼ばれる世代の私にとって、コロナ前はZoom(ズーム)を使ってオンラインで交流することなど想像もつきませんでした。
それが、数年の内に自由にできるようになっているのですから、人間のもつ力の大きさに驚きます。
こうした力が、専門的にトラウマ後成長と呼ばれるこころの変化にもつながっているのだと思います。
トラウマ後成長というのは、12年前の東日本大震災のときに、震災から立ち上がる地域住民の人たちを目にした専門家の間でよく使われた言葉です。
そうしたこころの力、地域の力を専門用語でレジリエンスと呼びます。
私たちが訳した『ポジティブ精神医学』(金剛出版)という本のなかでは、レジリエンスは「曲がっても折れない力、曲がっても元に戻る力」と解説されています。
さらに言えば、曲がったことをきっかけにさらに成長していく力と言うこともできるでしょう。
ただ、こうした力は、自分一人で引き出すのは難しいものです。
前々回、前回のラビット・イフェクトで説明したように、お互いに寄り添い合い、思いやりの気持ちを感じ合えることが大事です。
そうすることで、それぞれの人が持っている力をいかすことができるようになってきます。
逆に、一人になってしまうと本来持っている力さえも発揮できなくなります。
私は東日本大震災の直後から、宮城県女川町で地域の人たちと一緒に活動を始めました。
それも、精神科医として診療をするのではなく、それぞれの人がお互いにつながり合える活動を支援していったのです。
大切な人を亡くしたり、大切なものを失ったりした人たちが、お互いに助け合っている姿を見て、私自身が励まされました。
順風満帆でずっと人生が送れれば良いのですが、そうしたことはありえません。
いろいろな挫折や苦しみを体験しながら、それでも成長していけるのが人間だと、私は考えています。