こころトーク

2023.03.31

第391回 「自分の力を最大限発揮するフロー状態」

ワールド・ベースボール・クラシックの日本の優勝に興奮した人は多かったのではないでしょうか。

私もその一人ですが、とくに準決勝の9回裏に劇的な逆転をしたのは信じられない思いでした。

あのように緊迫した場面で本来の力を発揮するのは難しいと考えられています。

以前読んだ『プレッシャーなんて怖くない』(早川書房)という本のなかで、得点差の少ない試合の終盤で250打席以上打席に立ったことがある245人の選手の成績を調べた研究が紹介されていました。

それによれば、そのように緊迫した場面では本来の力を発揮できる人は少なくなるそうです。

バスケットのマイケル・ジョーダンでさえも、拮抗する試合での得点率は落ちていたそうです。

そのような過去のデータを打ち砕くような日本チームの選手の活躍です。

大谷選手が2塁打を打って出塁し、吉田選手がフォアボールを選びます。

それに続いて村上選手が2塁打を打って、吉田選手の代走の周東選手が、前を走る大谷選手に迫る俊足で逆転のベースを踏みました。

フロー状態というポジティブ心理学の言葉があります。

大事なことに没頭して自分の力を最大限発揮できる状態を意味する言葉ですが、9回裏の状態はそれぞれの選手がフロー状態に入っているように見えました。

それは、この9回に限ったことではありません。

すべての場面ですべての選手がフロー状態に入っていたから、優勝することができたのでしょう。

それぞれの選手が、一緒に力を合わせて頂点を目指すという共通の価値を意識し、そのため自分に何ができるかをそのとき時に考えて行動した結果だと思います。

これは、選手だけの力ではありません。

監督やコーチなどの指導者はもちろん、チームを応援するファンが一体になっていたから、選手もフロー状態に入れたのだと思います。

自分が大事だと思うことを意識して、今自分に何ができるかを考え、そこで全力を尽くすことの大切さを教えられたと思いました。

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