先週は、「ここトレ」の成り立ちについて書きましたが、提供を始めてから10年以上が経った現在、精神医療のなかでウェブサイトはもちろんのこと、チャットボットなどのデジタルツールが使われることが大幅に増えてきました。
私も「こころコンディショナー」というチャットボットを複数の企業と一緒に開発して、基本版を無料で提供し始めました。
YouTubeチャンネル「こころコンディショナー」で認知行動療法関連の動画の配信も始めました。
そうしたなか、最近は、生成AIのChat GPTが話題になっています。
そこで、今週は、先週の「こころトーク」の冒頭に書いた、「ここトレ」のようなサイトは生成AIに取って代わられるようになるのではないか、さらには、AIが人間のカウンセラーの代わりになるのではないかという疑問について、私なりに考えてみたいと思います。
結論から言うと、少なくとも現状ではそのようなことは起こらないだろうというのが、私の考えです。
私は、デジタル移民と呼ばれる世代の人間ですし、ましてやAIの専門家ではありません。
ですから、精神科医としての立場からの見解になりますが、生成AIの活用可能性は利用者がいかに的確に質問できるかと、AIの解答をどう活用できるかに大きく左右されます。
的確に質問できないと、生成AIは、的確な情報を集めて解答を生成することができません。
しかし、的確に質問できるのであれば、その人はAIに頼らなくても、自力で問題に向き合うことができるはずです。
悩んでいる人は、何が問題かわからず、的確な問いかけができないから精神的に混乱しているのです。
もう一点、問題に的確に対応するためには、問いかけに対する情報が集まってきたときに、その情報をきちんと評価できる必要もあります。
悩んでいる人は、情報の質を的確に評価できないために、不必要に落ち込んだり不安になったりしています。
生成AIが集める情報はすべてが正確ではなく、2~3割は間違った情報が含まれていると、言われています。
そのような間違った情報をきちんと見分けられるようになっているとすれば、その人のこころはかなり整っていると考えることができます。
私は、少なくとも現時点では、主体的な取り組みの大切さを認識させてくれたところに、生成AIの意義があると考えています。
▼チャットボット「こころコンディショナー」
https://www.cocoro-conditioner.jp/
▼YouTubeチャンネル「こころコンディショナー」
https://www.youtube.com/channel/UC47pR36mUzgu8IkToQqtGtQ