前回紹介したAIチャットボット「こころコンディショナー」は、コロナ禍が始まった年に無料で提供を始めました。
一人でストレスを抱えている人が多かったのでしょう。多くの人に利用していただき、使用後のアンケートにも答えていただきました。
そのなかに、チャットボットを使っているうちに人に相談したくなったと書き込んだ人がいました。
チャットボットは、ストレスを感じたときに自分を振り返るきっかけとして使うことはできます。
地域調査でも、「こころコンディショナー」を使うとこころが軽くなるという結果が得られています。
しかし、一人で自分のこころを振り返ったときに、デジタルツールの反応だけだと物足りなさを感じる人がいるのもたしかです。
そのような人が、人に相談したくなったと書き込んだのでしょう。
チャットボットを使っているうちに、他の人とのリアルな触れ合いを求める気持ちが出てきたようです。
コロナ禍の講演で私はよく、「セルフケアは一人ではできない」と聴衆の皆さんに伝えていました。
私たちは問題に直面すると、つい自分一人で取り組もうとしがちなのですが、一人でできることには限りがあります。
その結果、「自分は一人ぼっちだ」と考えるようになって、孤独感が強くなり、つらさが増すことにもなってきます。
そのときに信頼できる人がリアルに存在するだけで、孤独感が和らいで、気持ちが楽になってきます。
コロナ禍に限らず、取り立てて気の利いたコメントをしてもらわなくても、自分の話に耳を傾けてくれる人がいるだけでもずいぶん気持ちが軽くなるという体験をした人は多いでしょう。
だからといって、そうした人がいつもすぐそばに存在しているわけではありません。
そのときには、急がないことです。
少し時間をかけて、そのように相談できる人を見つけていくようにしてください。
その時間的なすきまを埋める手立てとしても、チャットボットが役に立つと、私は考えています。