こころトーク

2023.10.06

第418回 「痛みを抱えながら自分らしく生きる力」

先週紹介したように、宮城県女川町の健康づくり講演会に呼ばれて行ったのですが、講演会の前に、聴き上手ボランティアの方々と昼食を取りながら歓談する機会を設けてもらいました。

皆さんは、震災直後の苦労話はもちろんのこと、最近の活動について笑顔で話していました。

そのような明るい表情に触れると、私自身の気持ちも軽くなってくるのを感じて笑顔になってきます。

笑顔は伝染するのだと、あらためて感じます。

その一方で、皆さんが被災後に体験してきたこれまでの苦労が頭をよぎります。

家族など大切な人をなくした人もいれば、家や家財道具を流されて別の地域で生活するようになった人もいます。

その大変な苦労は、決して消え去ることはないでしょう。

そのようなことを考えながら、しばらく前にNHKのクローズアップ現代で取り上げていたネガティブ・ケイパビリティについて考えていました。

番組内では「モヤモヤ思考」と表現されていましたが、ネガティブ・ケイパビリティというのは、スッキリしない状態を抱え続けるこころの力のことです。

私たちは、生きていくなかでいろいろな課題、難題に直面します。

それをスッキリと解決できれば良いのですが、そう簡単にいかないこともたくさんあります。

いくら考え方を変えても、厳しい現実は、現実として目の前に、そして記憶に残り続けます。

被災体験は、まさにその例です。

そのようなときに、こころの痛みを抱えながらも、自分らしく生きていくことが求められます。

聴き上手ボランティアの人たちのように、自分が大事だと思う活動を続けることが力になります。

それも、ただ一人で頑張るのではなく、同じ思いを持った仲間と一緒に活動を続けることが力になります。

そうするうちに、こころの痛みは残りながらも、日薬、時薬、そして人薬がこころを癒していくのだろうと思います。

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