先週、気持ちがふさぎがちなときに、行動をして一時的にでも気持ちが軽くなることに意味があると書きました。
一時的にでも気持ちが軽くなるのは、それだけのエネルギーがこころにあるからですし、その体験がさらにこころを元気にします。
行動できたことで自信もでてきます。
そうは言っても、こころの元気がなくなっているとき、すぐに元気を取り戻すことはできません。
いや、少しずつ元気になっていたとしても、その変化にはなかなか気づけません。
それは、子どもの成長を見るようなものです。
アメリカに留学していたとき、他の医師がうつ病の患者さんの治療をしている場面に同席したときのことを思い出します。
主治医は徐々に良くなってきていると判断していたのですが、その患者さんは主治医のその判断を受け入れることができていませんでした。
うつ病のつらい症状が続いているのですから、まったく良くなっていないと訴えている、患者さんの気持ちはよくわかります。
その状況で、私の意見を求められました。
それまでの経緯を知らない私が何を言えば良いのかちょっと戸惑いましたが、私は、良くなってきているという主治医の判断と、変わっていないという患者さんの訴えとのギャップについて、小さい子どもの成長にたとえて話をしました。
親として早く大きくなってほしい、成長してほしいと考えていても、いつも一緒に生活していると、まったく変化に気づくことができません。
ところが、久しぶりに子どもに会った私の両親、つまり祖父母の目には子どもがずいぶん成長しているのがわかり、「ずいぶん大きくなったね」と喜んで声をかけてくれます。
毎日の変化はごくわずかなので、「変わってほしい」「変わっていないかな」と期待して見続けていても変化に気づけません。
ところが、ある期間をおいて見てみると、そのわずかな変化が積み重なって、ずいぶん変わっていることに気づきます。
うつ病の回復過程に限らず、仕事でも勉強でも、ごく小さな積み重ねが大きな変化になってきます。
今はつらくても、焦らず努力を積み重ねていけば、きっと変わっていけます。