こころトーク

2021.06.11

第298回 「ポジティブ思考の2つの側面」

先日、医師向けのオンライン講演会で、ポジティブ思考を認知行動療法でどのように考えるかという質問が出ました。

認知行動療法では、とっさの判断に縛られないで現実に目を向けながら柔軟に考えて問題に対処していくことを大切にします。

その意味では現実的な思考を大切にするアプローチと言うことができますが、そうだとすると、ポジティブに考えることは勧めないのかという質問でした。

その質問に対して、私は認知行動療法でもポジティブな思考を大事にすると答えた上で、ポジティブに考えるということには2つの側面があると説明しました。

その側面のひとつは、現実の出来事の良い側面に目を向ける考え方です。

私たちは、生きていくなかで、楽しみや喜びを体験するだけでなく、つらくてイヤな体験もします。

そうしたときに、イヤな体験のネガティブな部分だけでなく、ポジティブな側面にも目を向けて考えるのがポジティブ思考です。

もちろん、そのときに、良い面だけを見すぎてしまうと楽観的になりすぎて、現実の問題にきちんと対処できなくなるので注意が必要です。

一方、良くない面ばかりに目を向けるようになってしまうと、気落ちしてこころの元気がなくなってきます。

ですから、良い面、良くない面の両方に目を向けることが大事なのですが、これまでの研究からは、こころを元気にするためには良い面の方を少し大きく考えた方が良いことがわかっています。

ポジティブ思考のもうひとつの側面は、将来の可能性に目を向けるということです。

私たち人間は、他の動物と違って将来を考えることができるという特質を持っています。

その特質を生かすことが大事で、そのなかで将来の可能性を考えることも健康なポジティブ思考と言えます。

思いがけず良くないことが起きたとしても、将来同じ状態が続くとは限りません。

思いがけず良くないことが起きたのなら、それが思いがけず良い方向に進んでいくことも十分考えられます。

良い方向に進む可能性を信じて工夫をするか、逆にあきらめてしまうかで、その後の展開はまったく違ってきます。

大変な状況にあっても、将来の可能性に目を向けることができれば、本来持っているこころの力を引き出すことができるようになります。