こころトーク

2021.11.19

第321回 「時代とともに進化する認知行動療法」

アーロン・ベック先生が亡くなってから、時間を見つけて、ベック研究所が流しているベック先生のユーチューブを観るようにしていますが、以前観た動画でも、新しい気づきがあって勉強になります。

このように本人が亡くなってからもその人の話を聞いて勉強できるのはテクノロジーの発展のおかげで、うれしいかぎりです。

ベック研究所のユーチューブ動画はアーロン・ベック先生の動画だけでなく、他の動画も観ることができるのですが、娘のジュディス・ベック先生とアレン・フランセス先生の1時間に及ぶオンラインでの対話は、新しい認知行動療法の動きがわかる興味深い内容になっています(動画はこちら

アレン・フランセス先生も私の恩師の一人で、世界的に使われている「精神疾患の診断・統計マニュアル」の第4版、DSM-IVの作成委員長を務めた精神科医です。

精神疾患の診断の難しさをテーマにした『〈正常〉を救え』(講談社)や、トランプ大統領を生み出した米国社会の病理をテーマにした『アメリカは正気を取り戻せるか』(創元社)などの著作でも知られています。

その動画は昨年収録されたもので、リカバリーに焦点づけた認知療法をテーマにして話し合っています。

二人の話を聞いていると、認知行動療法が時代とともに進化してきたことがわかります。

以前の認知行動療法の面接では、患者さんが困っている問題にどう対処するかを話し合っていたと、ジュディス・ベック先生は言います。

患者さんは悩みを抱えて受診するのですから、問題について話し合うのは当然のことです。

しかし、リカバリーに目を向けるようになった最近の認知行動療法では、問題だけでなく、ポジティブ感情を重要視して、目標について話し合うようになったと言います。

次に会うときまでにどのようなことができるとよいかについて話し合い、次回にその体験について話し合うというのです。

こうした体験を通して、悩みを抱えた人の気持ちは楽になり、前向きな工夫ができるようになってきます。

私自身も、日本認知療法・認知行動療法学会だけでなく、日本ポジティブサイコロジー医学会で活動をするなかで、悩みへの対処に加えて、ポジティブな体験をすることの大切さを感じていたところでしたので、ジュディス・ベック先生の話はとてもしっくりくるものでした。

「こころトーク」の読者の皆さんも、ポジティブな体験を大切にしていってほしいと思います。

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