前々回、ウィルヘルム・ライヒという有名な精神分析家のことを紹介しながら、非言語的コミュニケーションの大切さについて書きました。
その指摘が相手にとって厳しい内容でも、伝え方や人間関係によって受け取り方がずいぶん違ってきます。
より良いコミュニケーションをとるために、言葉以外の要素がとても大きな役割を果たすのです。
こうした言葉以外の要素は、オンラインで交流することが多くなったコロナ禍でさらに重要になっています。
平板な画面に映った相手の顔を見ながら話をするのはとても疲れます。
対面で話しているときのように自然な形で交流するためには、お互いにかなりの想像力が必要になるからです。
以前に読んだ本のなかに、ピカソのエピソードが載っていました。
ある人がピカソに会って、自分の妻の写真を見せたときのことです。
「これが私の妻です」と言ったその人に、ピカソは、「ずいぶん小さくて平べったい方ですね」と答えたそうです。
ピカソがそのような発言をした真意はわかりませんが、言われてみるとたしかにそう思います。
ピカソがあのような抽象画を描いた理由もわかる気がします。
私たちは写真や動画を観て、それを頭のなかで三次元に置き換え、さらに通常の大きさに変えるなど、イメージの力を最大限に活用しているのです。
それは、オンラインでの交流でも同じで、自分なりにイメージを膨らませて話をしています。
オンラインの交流で疲れやすいのは、そうしたことも一因になっています。
ですから、対面で話しているとき以上に相手の気持ちに配慮しながら視線や表情を意識して話を進めることが大事になります。
たとえば、カメラが上についているPCで画面を見ながら話すと、伏し目がちになったり、相手を見下すような視線になったりします。
カメラの方に目を向けながら話をしたり、相手の言葉に合わせてカメラに目をやってうなずいたりする工夫をすれば、ずいぶん印象が変わってきます。
相手へのこうした思いやりは、対面での会話のときにも、もちろん大事です。