前回は、自分にとって何が大事かを意識することの大切さについて、リカバリーを目指す認知行動療法(CT-R)の考え方を紹介しながら書きました。
自分にとって大事なことをCT-Rではアスピレーションと表現しますが、アスピレーションを意識することは、人間関係でも大切です。
私が研修や講演でよく紹介する3コマのマンガがあります。
20年以上前から自殺対策に取り組んでいる青森県南部町で町民向けに配られたもので、サイコロジストの田中江里子さんが描きました。
私のYouTubeチャンネル「こころコンディショナー」のvol.26【話し上手になるヒント「アサーションとみかんていいな」】の中でも紹介しているマンガです。
若い二人が新しく店を出そうと話しています。
一人は、南部そばのそば屋さんをイメージしています。
しかし、もう一人はカフェをイメージしています。
南部町の特産のさくらんぼを使ったケーキを売りにしたいのでしょう。
ケンカになるかと思っていると、3コマ目では、二人が手をつないで、「でも、ま、いっか…」と言いながら歩いて行く場面が描かれています。
このマンガには二つのメッセージが込められています。
ひとつは、「どんなに親しくても、いつも完全にわかり合うことはできない」というメッセージです。
いくら親しくしていても、二人は独立した人間ですから、考えが違って当たり前です。
そのときに大切なのは、違いを抱えながら同じ方向に進んでいくことです。
これが、第二のメッセージです。
そのためには、二人にとってのアスピレーションを見失わないことです。
先のマンガの例では、どのような店を出すかではなく、「一緒に」力を合わせて店を出すことが二人にとって大切です。
どのような店にするかは、二の次です。
そのことをお互いに意識できていれば、無駄に言い合いになることはなくなります。
意見の違いは違いとして認識したうえで、二人で一緒に店を出すための努力や工夫ができるようになります。
アスピレーションを意識できれば、このように、自分のこころが元気になるだけでなく、人間関係もよくなってきます。
▼YouTubeチャンネル「こころコンディショナー」
vol.26【話し上手になるヒント「アサーションとみかんていいな」】
https://www.youtube.com/watch?v=jeUpYFCciUk