小児によく見られる咳や鼻水・発熱。「単なる風邪かな?」と見過ごしがちの症状ですが、中には大きな病気につながるものもあります。言葉でうまく説明できない小さなお子さんほど、ちょっとした症状の異変に気づけるかがとても大切です。
今回は早期の見極めが重要となる「小児ぜんそく」について解説します。
小児ぜんそくとは、簡単に言うと「空気の通り道がいつもより細くなり、息苦しくなったり、咳が治まりにくくなったりする状態」です。
文部科学省の調査(1)によると、喘息の有病率は小学生(6~11歳)で3.69%、中学生(12~14歳)で2.90%、高校生(15~17歳)で2.04%、という結果が出ています。体の成長に伴い有病率も低下しますが、小学校で考えるとクラスに1人はぜんそくを持っていると言えます。
日本小児アレルギー学会(2)によれば、原因は主に2つ。家族の体質や性別の違いなどの「遺伝」によるものと、アレルギーやたばこなどの「環境」によるものです。一般的に男の子に多く見られ、家族がぜんそくを持っていると遺伝する可能性が高くなります。また、ハウスダストや動物、食べ物などのアレルギーやウイルス感染、車の排気ガスなどによって発症することもあり、原因は人それぞれです。
病院を受診した際には症状に加えて、家族の体質や生活環境についても伝えるようにしましょう。
ぜんそくの症状には以下のような特徴があります。
(環境再生保全機構(3)のホームページより一部改変)
小さいお子さんだと症状を言葉でうまく説明できず、泣いたりぐずったりすることで表現することもあります。また、病院の受診時には、ぜんそくの症状が落ち着いているということもよくあります。
そこで重要なのが普段から一緒にいるお母さんからの情報です。上記に挙げた症状を把握したうえで、いつ・どこで・どんなことがあったのかを記録しておき、医師にきちんと伝えるようにしましょう。
薬で症状を抑える風邪などとは異なり、ぜんそくの場合は「症状や発作のない状態を維持していく」ことが重要。そのため、ぜんそくの薬には、症状がない時も継続して使用するステロイド薬などの薬と、発作が出たときだけ使用する薬の2種類があります。
「ステロイド」と聞くと、「成長が止まってしまう」「免疫力が落ちてしまう」などあまり良いイメージを持ってない方も多いのでは?
ですが、ぜんそくの治療に用いる吸入ステロイドは肺や気管に直接作用するため、全身への副作用は少ないとされています。また、発作がひどい時には飲み薬のステロイドを使用することもありますが、一時的なものが多いです。
いずれにせよ決められた使い方をしっかり守り、薬を適切に使用することがとても大事です。少しでも気になることがあれば、医師や身近な薬剤師に相談するようにしましょう。
小児ぜんそくについての正しい知識を身につけておくことが予防への第一歩となります。環境再生保全機構のサイトにわかりやすくまとめられていますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
(1)文部科学省「平成28年度学校保健統計調査」
(2)日本小児アレルギー学会「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン 2012」
(3)独立行政法人環境再生保全機構「小児ぜんそく基礎知識」
(https://www.erca.go.jp/yobou/zensok
u/basic/kodomonozensoku/index.html)
「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。