お薬をもらう時、食物アレルギーが無いか聞かれたことはありませんか?今回は食物アレルギーに焦点を当ててお薬の専門家が解説します。
文部科学省の2013年の調査(1)によると、食物アレルギーを持つ小中高生は2013年で約45万人にのぼり、2004年の約33万人から10万人以上も増えています。
日本小児アレルギー学会の「食物アレルギー診療ガイドライン(2)」によれば、「食物アレルギーの有病率は乳児期が最も高く、加齢とともに徐々に減少する」とされており、小さいうちほど食物アレルギーへの注意が必要となっています。
食物アレルギーの原因となる食物には、卵、牛乳、小麦をはじめ、魚介類やフルーツなどさまざまなものがあります。こうした原因食物は口に入れるだけでなく、触れたり、吸い込んだりするだけでもアレルギー症状が引き起こされることがあります。
症状はかゆみや湿疹、鼻水、咳などさまざまなものがあり、多くは摂取後2時間以内に現れます。
また、食物だけでなく、市販薬や病院から処方される薬にも注意が必要です。薬の中には卵や牛乳の成分が含まれているものもあります。食物アレルギーのある方は、必ず医師や薬剤師に相談するようにしてくださいね。
身の回りの意外なものにも原因食物が含まれている食物アレルギー。あれもこれも「念のため食べないようにしよう」「心配だから控えよう」と疑心暗鬼になってしまいがちですよね。
ところが、厚生労働科学研究班による「食物アレルギー診療の手引き(3)」によると、食物アレルギーの治療・管理は「正しい診断に基づいた必要最小限の原因食物を除去」が原則とされています。
人によってアレルギーの程度はさまざま。命にかかわる重度なものもあれば、少しくらいなら食べても症状が出ない軽度なものもあります。
「卵アレルギーだから」といってむやみに卵製品を避けるのではなく、アレルギー症状が出ない範囲で摂取することが望ましいとされています。
※自己判断では対応せず、医療従事者に相談するようにしてください。
ママたちの中には「子どもが食物アレルギーを発症しないためには原因食物を食べなければ大丈夫」と思われている方も多いかもしれません。
しかし、現在のガイドライン(2)では「食物アレルギーの発症予防のため、妊娠中や授乳中に母親が特定の食物を除去することは、効果が否定されている上に母親の栄養状態に対して有害であり、推奨されない」とされています。むやみやたらに食事制限することはやめましょう。
付き合い方が難しい食物アレルギーですが、健康のためには栄養バランスを保つことがとても大事。特に妊娠中や授乳中のママたちは、自身のためにもお子さんのためにも栄養管理をしっかり行いましょう。
また、食物アレルギーを持っていたとしても、どのくらいの量までであれば問題がないのか、専門家による正しい診断を受けたうえで、バランスのよい食事を心がけてください。
(1)文部科学省.学校生活における健康管理に関する調査(中間報告).
(2)日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.食物アレルギー診療ガイドライン2016.
(3)厚生労働科学研究班.食物アレルギー診療の手引き2014.
「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。