今月から、知ってトクするお薬や病気のことを薬のプロである薬剤師がわかりやすく解説する「知っ得!薬剤師コラム」の連載が始まります。
約半年間にわたり、ママ・プレママさん向けに子供にお薬を飲ませるコツや発熱などに関するお役立ち情報を月1回配信していきます!その後は、薬と食品の相互作用、嗜好品(コーヒー、タバコ等)と薬など、皆さんが知ってトクする情報を配信していきますので、お楽しみに!
第1弾は、「お薬と授乳の関係」について。
「授乳中にお薬を飲んだら、赤ちゃんにも影響しそう・・・」と不安なママさんも多いのでは? お薬の専門家がじっくり解説します。
日本産科婦人科学会の「産婦人科診療ガイドライン(1)」によると、程度に差はありますが、ほとんどすべての薬が母乳に移行するとされています。
しかし、一部の例外を除き「授乳婦が服用されている薬物が児(子供)に大きな悪影響を及ぼすことを示したエビデンス(根拠)はない」とされており、多くの薬は授乳中のママさんに安全に服用していただくことができます。
ただし、すべての薬の安全性が確保されているわけではないため、授乳中のお薬の服用は、自己判断ではなく、正しい情報に基づいて判断をすることが大切です。
では、どのような薬に注意したらよいのでしょうか。
先ほどの「産婦人科診療ガイドライン」では、抗がん剤と放射線ヨードは、原則、避けるべきとされています。その他、一部の抗てんかん薬や抗うつ薬、抗不安薬なども慎重に判断する必要があります。
国立成育医療研究センターでは、「授乳中に安全に使用できると思われる薬」を科学的に評価し、ホームページに掲載しています。また、授乳と薬についての考え方も解説していますので、内容を確認の上、表を参照ください。
<授乳中に安全に使用できると思われる薬(抜粋)>
>(国立成育医療研究センターHP)
この表に掲載されている薬であれば安心して服用できると考えられます。それ以外の薬については、かかりつけの医師や薬剤師に相談しましょう。
※薬の添付文書(薬の説明書)では、多くの薬に対して「母乳への移行が報告されているので授乳は控えることが望ましい」と記載されていますが、製薬会社では安全を保証するための膨大なデータが不足しているため、このように表現されています。
赤ちゃんへの影響を考えて、体調を崩しても薬を飲むのをためらったり、逆に授乳をやめたりしてしまうことも少なくないかと思います。しかし、お薬と上手に付き合えば、むやみに薬の服用を我慢したり、授乳をあきらめたりする必要はありません。まずはしっかり体調を回復させることが大事です。判断に迷った時は、ぜひ身近にいる薬剤師にご相談ください。
(1)産婦人科診療ガイドライン。ガイドラインとは、医療従事者や患者さまが適切な診療の意思決定を行うために作成された指針や文書です。
「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。