知っ得!薬剤師コラム

2017.11.06

風邪に抗生剤は効く?効かない?!


11月に入り、だんだんと寒くなってきました。空気も乾燥し、そろそろ風邪やインフルエンザに注意したい季節ですね。

風邪などでお医者さんにかかり、薬局でお薬を受け取る際、「あれ?今回は抗生剤が出てない」「前に風邪をひいたときには抗生剤が出ていたのに…」と思ったことはありませんか。

同じ風邪のような症状でも、抗生剤が出るときと出ないときって、どこに違いがあるの?そんな疑問にお答えするため、今回は「風邪と抗生剤」をテーマにお話しします。

そもそも、抗生剤って?

抗生剤は、病気の原因となる細菌の増殖を抑えたり、やっつけたりすることで病気の治りを助けるためのお薬です(1)。細菌による感染が原因となる病気に対して効果を発揮します。そのため、ウイルスによる感染が原因の場合は効きません(1)。服用しても、逆に副作用のリスクだけが残ってしまいます。

風邪の定義

風邪は、咳、喉の痛み、熱などの症状を伴う疾患のことで、上気道と呼ばれる鼻から喉までの通り道に炎症が起こり、医学的には「上気道感染症」とも呼ばれています。ウイルスや細菌などの微生物による感染が原因となって起こります。

そのため、医師は風邪の原因がウイルスなのか細菌なのかを見極め、抗生剤が必要かどうかを判断しています。

抗生剤を使用する場合、しない場合

ひとくくりに「風邪」といっても、それを引き起こす原因はさまざま。風邪の症状や程度によって、抗生剤が使われたり、使われなかったりします。

たとえば、急性上気道炎という鼻から喉にかけての炎症などがある典型的な風邪の場合、その原因は多く(80-90%)はウイルスによるものと言われています(2)。そのため、抗生剤はあまり処方されないことが多いですが、症状が激しい時や慢性化した時などに抗生剤が必要になるケースがあります。

また、喉の痛み・腫れが激しい場合、多くはウイルスが原因ですが、一部、A群溶連菌という細菌が原因のことがあり、抗生剤による治療が必要となることがあります。

抗生剤の乱用はキケン!

「解熱剤だけじゃ不安…」「早く治したいから抗生剤を出してほしい!」と、お医者さんに抗生剤の処方をお願いする方も多いかもしれません。

しかし、きちんと原因を見極めず、なんでもかんでも抗生剤に頼りすぎてしまうと、下痢などの思わぬ副作用を招いてしまったり、肝臓や腎臓への負荷がかかってしまうこともあります(1)

また、最近では、不適切な抗生剤の使用によって、「薬剤耐性菌」という、抗生剤が効かない、より強力な細菌ができてしまうことが世界的な社会問題となっています(3)。本当に抗生剤が必要な時に薬が効かなくなってしまうため、薬の適切な使用が呼びかけられています。

医師の処方通り、きちんと飲むことが大事!

このように、風邪における抗生剤の使用は、状況によって異なります。もし抗生剤が処方されなくても、医師の指示を守って、しっかり休息をとることが重要です。

ただし、数日経ってもなお症状が改善しなかったり、悪化したりする場合には、抗生剤が必要なケースに進展している可能性もあるため、その場合は再受診するようにしましょう。

また、抗生剤を処方された場合は、症状の悪化や副作用が現れない限り、自己判断で中断せずに医師の指示通り最後まで飲み切ることが大切です。

症状の悪化や副作用が疑われる場合は医師やお近くの薬局の薬剤師に相談してください。

(1)MSDマニュアル家庭版「抗生物質」16.感染症-抗生物質
(2)日本呼吸器学会HP「感染性呼吸器疾患 かぜ症候群」
(3)抗微生物薬適正使用の手引き 第一版. 厚生労働省健康局結核感染症課. 2017.6

「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。

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