国民病の1つにも数えられる「糖尿病」。現在、「糖尿病が強く疑われる人」「糖尿病の可能性を否定できない人」を合わせると、日本に2,000万人もいるとされています(1)。
そのまま放置していると血管が傷ついて、将来的に失明してしまったり、透析治療が必要になったりする等の可能性があるため、早期発見がとても大事です。また、糖尿病になる一歩手前という方でも、生活習慣の改善によって発症のリスクを減らすことができます(2)。
そこで、今回は「糖尿病とその予防のためのアドバイス」についてご紹介します。
糖尿病をお持ちの方も、そうでない方も、一度は「インスリン」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
インスリンはすい臓から出るホルモンの1つで、細胞が血液中を流れるブドウ糖(血糖)を取り込み、エネルギーにする活動を助ける働きをしています。インスリンの作用が不足することで血液中のブドウ糖濃度=「血糖値」が高くなり、この状態が続くのが糖尿病です。
インスリンの作用が不足する原因はさまざまで、糖尿病の発症には肥満や運動不足、食べ過ぎ等、環境によるものや、親族に糖尿病を持っている人がいる等、遺伝によるものなどがあります(3)。
血糖値が高い状態が続くと、喉が渇く、尿の回数が増える、体重が減る等の症状が出ますが、こういった症状は初期ではみられません。「糖尿病が強く疑われる人」のうち、4人に1人は治療を受けていないと言われており、知らないうちに症状が進んでいることもあります(1)。
糖尿病は早期発見・早期治療が肝心であり、症状の進行を抑えるためにも血糖値のコントロールが欠かせない病気です。
糖尿病は、「空腹時血糖値」や、75gのブドウ糖を摂取した後に血糖値を測る「75g経口ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)」、そして過去1~2ヶ月の平均血糖値を表す「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」の値等を見て診断します。
糖尿病になるまでには血糖の値によって、「正常型」、糖尿病の疑いがある「糖尿病型」、どちらも当てはまらないが近い将来糖尿病になる可能性がある「境界型」(糖尿病予備群)の3つに分けられます。
境界型は「HbA1c6.5%未満」で、「空腹時血糖値が110~125㎎/dL」もしくは「75gブドウ糖負荷後2時間の血糖値が140~199mg/dL」のどちらかに当てはまる方で、「正常型の6~20倍も多く糖尿病を発症する」と言われています(2)。
【「正常型」・「境界型」・「糖尿病型」の血糖値とHbA1cの関係】
注1)空腹時血糖が110~125 mg/dLの方、HbA1cが6.0~6.4%の方は、「糖尿病の疑いが否定できない」グループとされ、75gOGTTの検査が推奨されています。
注2)空腹時血糖100~109 mg/dLの方、HbA1cが5.6~5.9%の方は、「将来糖尿病を発症リスクが高い」グループとされ、特に高血圧・脂質異常症・肥満などがある方は75gOGTTの検査をするのが望ましいとされています。
(出典:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター糖尿病情報センター)
前段の図で「境界型」に当てはまった方や、健康診断等で「糖尿病予備群」と言われた方は、「痛みなども無いし、まだ大丈夫~♪」と思っていませんか?しかし、体の中では徐々にインスリンの働きは弱くなってきています。
糖尿病ガイドラインでは、「食事や運動習慣の是正を中心とした生活習慣介入は、2型糖尿病の発症を抑制させる効果がある」と示されています(3)。下に挙げた7つのポイントを意識して、ぜひとも早いうちから生活習慣を見直すようにしましょう。そして、再度、検査を行うことで血糖値やHbA1cの状態を定期的にチェックするようにしましょう。
(出典:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター糖尿病情報センター)
糖尿病の発症には、いくつかの種類がありますが、多くの場合は知らないうちに血糖値が徐々に高くなってきますので、早期に発見し、対応をしていくことが非常に重要です。
血糖値やHbA1cを測る一番身近な方法は会社や自治体などで行っている「健康診断」です。ぜひ、定期的に健康診断を受け、糖尿病やその予備群と呼ばれる状態を早く見つけましょう。
最近では、HbA1c等の測定ができる機器を置いている薬局も増えてきています。処方せんがなくてもどなたでもご利用いただける、日本調剤の薬局内施設「健康チェックステーション」にも測定コーナーを設置しており、結果に基づいて薬剤師や管理栄養士による健康管理のアドバイスを受けることができます。ぜひお気軽にお立ち寄りください。
(1)厚労省 平成28年 国民健康・栄養調査結果の概要
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-
10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou_7.pdf
(2)国立研究開発法人 国立国際医療研究センター糖尿病情報センター
http://dmic.ncgm.go.jp/
(3)糖尿病診療ガイドライン2016 南江堂
「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。