知っ得!薬剤師コラム

2018.02.05

知っておきたい花粉症の豆ちしき

2月に入り、花粉症を持っている方にはツラ~い季節がやってきました!

花粉症とは無縁、という方も油断は禁物!花粉症は花粉によって起こるアレルギーで、今シーズンから急に発症することもあります。

今では国民病とも呼ばれるようになった花粉症ですが、いつから現代人を悩ます存在になったのでしょうか?発症したら一生付き合っていく花粉症を完治させる薬はあるのでしょうか?薬剤師と一緒に見ていきましょう。

現代人を悩ます花粉症は約50年前の○○が原因だった!?

日本でスギ花粉症が見つかったのは1963年のこと。翌年の東京オリンピックの年に論文で報告されました。

実は花粉症が日本にもたらされた要因は「戦後の経済成長」。復興に向けて、成長が早く、加工しやすいスギを建築材料などに活用しようと、政府は北海道と沖縄を除く全国の山林で植林を推進。

その結果、1960年代後半から花粉の放出が多くなる樹齢30年以上のスギが増えました(1)。その後、何度か花粉の大飛散が起こり、1979年には社会問題にもなり、いまや3,000万人を超える日本人がスギ花粉症と推定されています。

1998年から2008年までの10年で有病率は10%も増加(2)

どうして突然、花粉症になってしまうの?

花粉症の原因は、ずばり「アレルギー体質」です。アレルギー体質は花粉という抗原を体内に取り込み、IgEという抗体を作ります。この抗体がある一定量できると、花粉症の症状が出てきます。 このアレルギー体質を遺伝的に持っているかが、花粉症を発症するか否かを左右します。

また、IgEなどの抗体を多く作る体質を遺伝として引き継ぐと言われており、家族で花粉症を患うケースが多くなっています。

しかし、花粉症の原因には生活習慣や、住環境、食生活など他の要素もあり、家族に花粉症を持っている方がいても、必ずしも発症するわけではありません。

花粉症には3つのタイプがある?!

花粉症は鼻の症状別に3つのタイプに分類され、鼻づまりが起こる「鼻閉型」、くしゃみや鼻水が出る「くしゃみ・鼻漏型」、どちらの症状もある「充全型」があります。

その中でさらに花粉症の重症度の大きさによって、「初期療法」「軽症」「中等症」「重症・最重症」の4段階に分けることができます。この分類や症状のタイプを見て、どのような薬を使用するかを決定します。

(出典:鼻アレルギー診療ガイドライン2013年版ダイジェストより作成)

一般的に抗ヒスタミン薬と呼ばれるアレルギー症状を抑える薬を用いる場合が多く、病院で処方されている薬の中には処方せんが無くても薬局で購入できるものもあります。上の表で「軽症」までであれば市販薬で様子を見てもよいでしょう。

最近は眠気などの副作用が少ない薬も出てきているので、気になる症状が出てきた際には、ぜひ薬剤師に相談してみてください。

まだ症状が軽いうちは1種類の薬で改善できることが多いですが、重症化してくると鼻噴霧用ステロイド薬など、複数の薬の併用が必要になります。症状が重くなってきたなと感じたら、病院を受診しましょう。

花粉症を卒業できる日は来るか?

花粉症の完治には、原因となるアレルギー体質を治すことができれば近道ですが、難しいのが現状です。花粉症の薬には、点鼻薬や目薬、内服薬など多くの薬がありますが、いずれも症状を和らげる対症療法という治療法であり、根治を期待するものではありません。

このツラい症状とずっと付き合っていかなくてはいけないのか…と肩を落とした皆さん、朗報です!

近年、花粉症の原因を治す原因療法として自宅で治療できる「舌下免疫療法」が登場し、期待が寄せられています(3)。舌下免疫療法は、舌の下に治療薬を投与することでアレルギーの原因となるアレルゲンを少しずつ体内に取り込み、体を慣らす治療法です。

ただし、治療前には症状がアレルゲンによるものかどうかの診断が必要となり、治療には3~5年かかること、すべての方に効果が期待できるわけではないことを理解する必要があります。

花粉症にサヨナラしたい…!という方は、お気軽に医師や薬剤師に相談してみてください。

 

(1)林野庁業務資料(平成24年3月31日)
http://www.rinya.maff.go.jp/j/sin_riyou/
kafun/data.html
(2)鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症―2016年版(改訂第8版)
(3)トリーさんのアレルゲン免疫療法ナビ(鳥居薬品)
http://www.torii-alg.jp

「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。

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