知っ得!薬剤師コラム

2018.07.09

コレステロール値が高いって、どういうこと?脂質異常症

健康診断で「コレステロール値」が高い、と言われたことはありませんか?

厚生労働省の報告によれば、健康診断などで「血中コレステロール値が高い」と言われた経験がある人は、約3人に1人だそうです(1)

血中コレステロールなど脂質が高い状態は脂質異常症(高脂血症)と呼ばれ生活習慣病の一つです。自覚症状がほとんどないため、知らないうちに動脈硬化など重篤な病気に進むことがあります(2)

今回は、そのような脂質異常症の原因、予防、治療などについて、説明します。

脂質異常症って何?

脂質は、炭水化物、たんぱく質と共に三大栄養素の一つで体に必要な物質ですが、過度に多くなると、体によくありません。血液の中の脂質が多い状態は、脂質異常症(高脂血症)と呼ばれます。

脂質はいくつか種類があって、中性脂肪、コレステロール、脂肪酸などがあります。

コレステロールは血中ではLDLコレステロール(LDLというたんぱく質の一種とコレステロールの複合体。「悪玉コレステロール」とも呼ばれます)やHDLコレステロール(HDLというたんぱく質の一種とコレステロールの複合体。「善玉コレステロール」と呼ばれます)などとして存在しています。

はじめにお話した「コレステロール値が高い」というのは、それらのコレステロールの総数で、その値が高いと脂質異常症が疑われます。

脂質異常症とは、LDLコレステロールが140mg/dL以上、HDLコレステロールが40mg/dL未満、もしくは中性脂肪が150mg/dL以上の状態を指します(3)

HDLコレステロール値だけは、基準値より低い時に、脂質異常症になります。

この「LDLコレステロール」「HDLコレステロール」「中性脂肪」の3つについて、どのようなものなのか、見ていきましょう。

悪玉・善玉コレステロールと呼ばれる理由

コレステロールは、本来体に必要な物質ですが、量が多くなると有害になります。

コレステロールは、LDLコレステロールによって体の中に運ばれていくのですが、量が多いと血管の中などに溜まってしまいます。そのため「悪玉コレステロール」とも呼ばれます。

LDLコレステロール(通称:悪玉)は、量が多いと、血管の壁に沈着し動脈硬化の原因になります(4)

LDLコレステロールは、食事中の不飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、生クリームなどに多く含まれる)やコレステロールを多く含む卵黄や魚卵の過剰摂取などで増えます(4)

一方、HDLコレステロールは要らなくなったコレステロールを回収する働きをする(体にとって良い働きをする)ので「善玉コレステロール」と呼ばれています。

このHDLコレステロール(通称:善玉)は、肥満、喫煙、運動不足によって減少してしまいます(4)

中性脂肪はメタボの原因にも!

中性脂肪は、体の中のエネルギー源として利用されますが、多くなると内臓脂肪などとして貯蔵され、メタボリックシンドローム(メタボ)や脂肪肝の原因になったり、動脈硬化を促進したりします。

中性脂肪は、甘いもの(砂糖の入ったソフトドリンク)、炭水化物、酒などの取りすぎで高くなります(4)

生活習慣で予防・改善ができる!

動脈硬化が進むと、心臓や脳などの血液の流れが悪くなり、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞などの合併症になることもあります(2)

脂質異常症を予防・改善するには、原因を取り除くための生活習慣の改善が必要です。

先にご紹介した、不飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、生クリームなどに多く含まれる)やコレステロール(卵黄、魚卵に多く含まれる)の多い食事を避けたり、食事の量が過度である場合は適切な量に減らしたり、清涼飲料水、アルコールの飲み過ぎ、甘いお菓子の食べ過ぎを避けることで改善ができます(2)

また、野菜などの食物繊維や魚油(とくにイワシなどの青魚)などの摂取も予防・改善に有効です(2)

そして、メタボの方の場合は、減量が大切です。

脂質異常症の薬の治療で大事なこと

脂質異常症では、生活習慣改善(食事・運動)が重要になりますが、生活習慣の改善で不十分な場合は、薬物治療が必要になります(3)

薬物治療の場合は、内服薬を毎日服用するのが一般的な治療方法ですが、症状があまりないため効果を実感できず、ついつい服用を中断してしまいたい気持ちになることもあるかもれません。

しかし、他の生活習慣病と同様に、医師の指示の通りに薬を服用し、治療を継続することが大切です。

もし、薬を使用する上で、服用方法や副作用・効果などについて不安な点やよくわからないことがあれば、遠慮なく薬剤師にお尋ねください。

実はほかの病気も一緒!?大事なのは「生活習慣」

ここまで脂質異常症についてお話してきましたが、これまでに「薬剤師コラム」でご紹介してきた糖尿病や高血圧症も、脂質異常症と同じく生活習慣病です。生活習慣病は、偏食や運動不足などの生活習慣を改善することで予防や改善が可能です。

つまり、生活習慣を改善さえすれば、それらを同時並行的に予防・改善していくことが可能になります。

今日できることから一つずつ、少しずつ、生活習慣を変えてみていってはいかがでしょうか。

参考資料

(1)厚生労働省.平成22年国民健康・栄養調査結果の概要.
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/
2r98520000020qbb-att/2r98520000021c0o.pdf
(2)日本生活習慣病予防協会.脂質異常症(高脂血症状).
http://www.seikatsusyukanbyo.com/
guide/dyslipidemia.php
(3)日本動脈硬化学会・日本医師会. 脂質異常症治療のエッセンス.
http://dl.med.or.jp/dl-med/jma/
region/dyslipi/ess_dyslipi2014.pdf
(4)厚生労働省. e-ヘルスネット:「脂質異常症」.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
information/metabolic/m-05-004.html

※当コンテンツ内の画像はイメージです。

「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。

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