知っ得!薬剤師コラム

2018.08.06

逆流性食道炎かも?胸やけ、喉、咳・・・【胃食道逆流症】

「逆流性食道炎」という病気はご存知ですか?皆さんどこかで耳にしたことがあるかと思います。
これは、「胃食道逆流症」(GERD)の1つで、胃酸等が食道に逆流することによって起こります。症状としては、胸やけや、喉の奥に酸っぱいものがこみ上げてくる、咳が出る、などがあります(1)

さまざまな報告がありますが、1980年代は数%であった胃食道逆流症の日本における有病率は、2000年代には20%前後と増加しており(1)、多くの人がこの症状で悩んでいます。

今回は、そのような胃食道逆流症について、原因、予防、治療についてお話したいと思います。

胃食道逆流症(GERD)とは?

胃食道逆流症 というと聞き慣れないかと思いますが、逆流性食道炎というと聞いたことがある方が多いかと思います。

逆流性食道炎は胃酸等の逆流により食道に炎症が起こる病気です。この逆流性食道炎と、胃酸等の逆流により、炎症はないけれども胸焼けなどの不快な自覚症状だけがあるものをあわせたものを胃食道逆流症といいます(2)

胃食道逆流症の症状は、食道症状と食道外症状の二種類に大別できます。

食道症状とは胸焼け、呑酸(喉や口に胃酸が逆流して酸味や苦い感じがすること)などの、いかにも食道に原因があるように理解できる症状です。

食道外症状とは喉の違和感、声がかれる、咳が出るなどの、あたかも食道以外の部分が原因のように感じられる症状です(2)

胃食道逆流症(GERD)なぜ起こるの?

胃食道逆流症の原因は
(1)食道に酸が逆流しやすい状態がある
(2)食道の粘膜を刺激する酸が胃から分泌されている
(3)逆流が少なくても、粘膜が過敏になっている
など、さまざまなものがあります(下表参照)。

食べ過ぎるとげっぷがでるのは、胃にたまった空気を出すためですが、そのときに「空気だけでなく胃酸が逆流することが胃食道逆流症のおこるもっとも大きな原因」とされています。

げっぷは生理現象なので、それ自体が健康に悪いとうわけではありません。しかし、げっぷをしたときに胃酸が逆流するようになってしまうと、先に挙げたような不快な症状が起こってしまいます(2)

※食道と胃のつなぎ目(噴門)にある下部食道括約筋(LES)の一過性の弛緩。

げっぷは暴飲暴食、脂肪分の多い食事によって起こりやすくなります。

また、よく噛まずに食べる人は、空気を大量に飲み込むためげっぷが出やすくなり、胃酸が逆流しやすくなります。

そしてアルコールや喫煙も影響すると言われています。

その他、肥満や腹部を締めすぎる服装などのお腹に圧力をかけている状態、食べてすぐ寝る等の生活習慣により症状が発生している場合もありますので注意が必要です(2)

<胃食道逆流症(GERD)の原因>

※表は患者さんと家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイドブックより

早期発見・治療が大事

日常の生活の質を表す指標としてQOL(Quolity of Life)という言葉があります。

胸焼けで食事が楽しめない、症状が辛くて元気が出ないなど、胃食道逆流症が悪化することによりQOLは低下していきます。

胃食道逆流症の治療の目標は、症状をコントロールしてQOLを改善し、合併症を予防することです。

先述の通り、胃食道逆流症は、胃の痛みだけではなく、咳が続く、喉に違和感がある、声がかれるなど、さまざまな症状が現れます。

受診の際はどのような時に症状が起こっているか、他に起こっている症状が無いか等を医師に伝えるようにしましょう。

軽症である場合には生活習慣など改善などで良くなることがありますが、薬剤により治療をすることで早く改善します。

また、重症である場合には早めに的確な治療が必要です(1)(2)

胃食道逆流症(GERD)の薬での治療

胃食道逆流症の治療には、胃酸の分泌を抑制する内服薬が主に用いられます。

プロトポンプ阻害剤(PPI)とよばれるタイプの酸分泌抑制薬が最初に用いられることが多く、症状を再発させないように継続して用いられることもあります。

また、胃食道逆流症は、進行すると、貧血や食道等からの出血、食道腺がん等の合併症が発症する恐れがあります。

その予防にもつながりますので、たとえ服用して症状が和らいだり自覚症状がなくなったりしても、医師の指示通りに薬物治療を継続することが大切です(1)(2)

症状を和らげるには生活習慣の改善・工夫が大事

胃食道逆流症の治療のためには、生活習慣の改善が大切です。

胃酸の分泌を増やすような脂肪分の多い食事、チョコレート、アルコール飲料、たばこ等を控えるようにしましょう。

また、暴飲暴食・早食い・炭酸飲料は、胃酸が逆流するげっぷを引き起こしやすくなりますので避けたほうが良いです。

そして、お腹に圧力がかからないよう、肥満の解消、前かがみの姿勢を避ける、腹部をきつく締める服装を避ける等も効果的です。

さらに、寝る時は上半身を高くすると、症状の緩和に効果的です。水平で横になる場合には左を下にした方が右を下にするより逆流が少ないことが確認されています(2)

まとめ

胃食道逆流症の症状により、知らないうちにQOLを下げてしまっている可能性があります。

「ちょっと調子が悪いだけだから(すぐ治るはず)」と自己判断せず、気になる症状がある場合は、医師や薬剤師といった専門家にご相談ください!

特に、薬を使用して治療していく場合には、薬剤師が薬の効果や副作用、使用方法など、不明点や不安な点に関してご相談を承ることができます。

薬局や薬剤師をうまく活用して、ご自身の健康管理にお役立ていただければと思います。

(1)日本消化器病学会 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015(改訂第2版)
(2)日本消化器病学会 患者さんと家族のための胃食道逆流症(GERD)ガイドブック

※当コンテンツ内の画像はイメージです。

「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。

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