知っ得!薬剤師コラム

2018.09.03

今さら聞けない!?「ピロリ菌」を知る

「ピロリ菌」という言葉はご存知ですか?テレビや雑誌などで一度は耳にしたことがあると思います。ピロリ菌は胃の中に存在し、胃炎、潰瘍(かいよう)、胃がんなどの原因とされている菌です(1)

胃の中にある、といっても、全ての人がピロリ菌を持っているわけではありません。感染のルートは明らかにはなっていませんが、日本人の感染者数は約3,600万人といわれていて、子どもには感染者が少なく、高齢者には多いことがわかっています。

ピロリ菌には、なんとなく「悪い菌」のイメージがあるかもしれませんが、実際に私たちの体にどんな影響があるのでしょうか。

今回はそんな「ピロリ菌」について、基本的なところからお話したいと思います。

ピロリ菌って何?

ピロリ菌は2~3回ねじれた、らせん状の形をしていて、べん毛を回しながら胃の中を活発に動きまわります。
胃の中はほとんどの細菌が死滅してしまうほど強い酸にさらされていますが、ピロリ菌はそのような環境の中でも生息できる、ちょっと変わった菌なのです。

ピロリ菌も決して胃酸に強い菌ではありません。では、どうして胃の中で活動ができるのでしょうか?実は、ウレアーゼという酵素を使って自分の周囲をバリアすることができ、酸性ではなく、中性に近い状態で自由に活動できるのです。

そんなピロリ菌は、生まれつき人の体内にあるわけではありません。感染経路としては、口から体内に侵入することが考えられていますが、どのように感染するのか明らかにはなっていません。

戦中、戦後など衛生状態が良くないときには水から感染した可能性がありますが、現在、日本ではその可能性はほとんどありません。
冒頭で説明したように、ピロリ菌は高齢者における感染率が高く、若年層では低くなっており、また時代の経過によってピロリ菌感染率は低下してきていると思われます(2)

※図は参考資料(2)を基に作成

ピロリ菌が原因?「潰瘍」って感染症なの!?

少し前までは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因は、ストレスや飲食物、鎮痛薬などによるものだとされていました。

胃内では、食物を消化するために、胃酸やペプシノーゲン(消化酵素の一種であるペプシンのもと)などを分泌しているため、強い酸性の状態になっています。

通常であれば、胃内の粘液が胃酸から胃壁を守ってくれるのですが、ストレス、薬、飲食物などによって胃粘膜の障害や粘液の分泌が低下することで、胃炎や潰瘍を引き起こしてしまいます。

ところが、胃からピロリ菌が見つかってからは、胃炎や潰瘍は感染症と言われるようになりました。ピロリ菌に感染すると、胃や十二指腸の粘膜に炎症が起きたり、粘液が減ったりすることによって、粘膜が酸に侵されてしまいます。

なんと、胃潰瘍と十二指腸潰瘍におけるピロリ菌の感染率は、約80~90%だったというデータもあります(3)

一方で、ピロリ菌が陰性である潰瘍も多少なりとも存在します。非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれている痛み止めによるものが有名で、その場合には従来の治療を行います。

ピロリ菌は除菌した方がいいの?

以前は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍を治療する場合、数週間にわたる酸分泌抑制薬の服用が一般的でした。しかし、潰瘍は再発することもあり、再度治療を実施するケースも少なくありませんでした。

現在では、潰瘍や胃炎の治療方法として、ピロリ菌の除菌が一般的となっています。ピロリ菌を除菌するための治療は、抗菌薬を1週間服用するだけでよく、また、再発することが非常に少ないことがわかっています。そのため、ピロリ菌を除菌することは、好ましい治療方法といえます(1)

悩ましいのは、「ピロリ菌が陽性だが、胃には何も問題がない。それでも、除菌は必要か?」というケースだと思います。胃に問題がなくても除菌する例としては、胃がん予防が挙げられます。

あるデータでは、胃炎または潰瘍になって、10年間で胃がんが発生した人数を調べたところ、ピロリ菌に感染していない人は0%(280人中0人)であり、感染していたのは2.9%(1,246人中36人)という結果でした(4)

※図は参考資料(4)を基に作成

また、早期胃がんの治療時にピロリ菌を除菌しなかった場合、3年以内に新しい胃がんが発生した人が、除菌した人の2.7倍も存在するというデータもあります(5)

しかし、ピロリ菌を除菌すれば、必ず胃がんが治るというわけではありませんのでご注意ください。

ピロリ菌の除菌方法と注意点

ピロリ菌は、薬を使って除菌します。具体的には、抗菌薬2剤と酸分泌抑制薬1剤を組み合わせて1週間服用します(1次除菌)。この治療による除菌の成功率は80~90%といわれており(6,7)、除菌ができたかどうかは1カ月で分かります。

もし、除菌に失敗した場合には、抗菌薬を変更して、再度除菌を実施します(2次除菌)。2回目の除菌を終えた時点での成功率は、82~100%です(8~10)

ピロリ菌の除菌を行う際には、副作用がでる場合がありますが、多い副作用としては、抗生剤による下痢・軟便があります。その他、味覚異常、発熱、蕁麻疹などのアレルギー反応も知られています。

これらの症状が軽い場合は、処方薬を1週間で飲み切っていただきたいのですが、症状がひどい場合には医師または薬剤師に相談してください。自分の判断で服薬をやめてしまうと、十分な効果が得られない可能性があります。

また、飲み忘れや飲み間違いは、抗菌薬に対する耐性菌を作ってしまう可能性もあります。耐性菌が作られてしまうと、除菌がうまくいかなくなってしまいます。

近年は、除菌の成功率が年々低下していることが問題になっています。あるデータによると、2000年以前が90.6%であったのに対し、2007年以降では74.8%に減少しています(11)

まとめ

昔は、強い酸にさらされている胃内には細菌はいないと考えられていました。しかし、そんな環境の中で生息するピロリ菌が発見されてから、さまざまなことがわかってきました。その一つが、ピロリ菌に感染することによって胃炎や胃潰瘍などが引き起こされる可能性があるということです。

現在、胃潰瘍などの治療方法として、ピロリ菌の除菌が一般的となったことで再発も減り、潰瘍の患者数は大幅に減少しています(12)

※図は参考資料(12)を基に作成

「胃の調子が良くないかも・・・」と感じたら、胃がん予防のためにも、胃の中にピロリ菌がいるかどうかを調べて、なるべく早く除菌することは重要といえます。

他人事ではないかもしれない「ピロリ菌」の感染。ピロリ菌を除菌する治療は、3種類の薬を1週間服用するだけです。

もし、分からないことや副作用など気になることがあれば、お気軽に薬剤師にお問い合わせください。
参考資料

(1)H.pylori感染の診断と治療のガイドライン2009改定版
http://www.jshr.jp/pdf/journal/
guideline2009_2.pdf

(2)Kamada T; Helicobacter 20:192-198,2015
(3)Graham DY; Gastroenterology 96:615-625,1989
(4)Uemura N; N Engl J Med. 345:784-789,2001
(5)Fukase K; Lancet 372:392-397,2008
(6)The Maastricht consensus report;Gut 41:8-13,1997
(7)Peura DA; Gastroenterology 113:S4-S8,1997
(8)Shimoyama T; J Gastroenterol 39:927-930,2004
(9)沖本忠義; 第9回日本ヘリコバクター学会学術抄録集(松本):46,2003
(10)Isomoto H; Aliment. Pharmacol. Ther. 18:101-107,2003
(11)Sasaki M; J Clin Biochem Nutr. 47:53-58,2010
(12)平成26年患者調査(傷病分類編):厚生労働省大臣官房統計情報部 調査担当係
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/
hw/kanja/10syoubyo/dl/h26syobyo.pdf

※当コンテンツ内の画像はイメージです。

「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。