知っ得!薬剤師コラム

2018.10.01

予防が大切!ロコモティブシンドローム

いつまでも自分の足で歩きたい・・・多くの人がこのように思っているのではないでしょうか。

そこで、現在注目されているのが「ロコモ」の予防です。

「ロコモ」とは、 2007年に日本整形外科学会が提唱した新しい概念で、「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」の略称です。骨・関節・筋肉といった運動器の機能が低下している状態のことをいい、進行すると「立つ」「歩く」など日常生活に支障が出てしまいます(1)。また、生活の自立度が下がり、介護が必要になるリスクが高まるといわれています。

今回は、そんな「ロコモ」予防という観点から、原因や対策についてお話したいと思います。

平均寿命と健康寿命の違い

現在、日本は超高齢社会といわれており、平均寿命も延びています(2)

厚生労働省のデータによると、日本人の平均寿命は、男性が80.21歳、女性が86.61歳です。しかしながら、健康で自立した生活を送ることができる期間(健康寿命)は、平均寿命よりも短くなっています(2)

※図は参考資料(2)を基に作成

上図で見られるように、平均寿命と健康寿命との間には、女性では約12年、男性で約9年の差があります。この「差」の期間とは、寝たきりなどといった「日常生活に制限がある状態」であることを意味しています。

健康寿命を延ばし、健康で自立した生活を送るためには、「ロコモ」の予防が重要となるのです。

どうしてロコモになってしまうの?

ロコモは、骨・関節・筋肉など運動器の機能が低下している状態です。原因としては、「加齢」「運動不足」「肥満」「痩せすぎ」「外出機会の低下」などさまざまなものが挙げられます。

また、ロコモの原因となる疾患もあります。代表的なものとしては、「骨粗しょう症」や「変形性関節症」、「脊柱管狭窄症」です。

「骨粗しょう症」は骨密度が減少して徐々に骨がもろくなり、骨折しやすくなる病気です。背中や腰に痛みが生じ、手すりがないと階段が上れないような状態になります。

「変形性関節症」は関節の軟骨がすり減って、膝に慢性的な痛みが起こる疾患です。

「脊柱管狭窄症」は、加齢によって脊柱管が狭くなり、管の中を通っている神経が圧迫されることによって、足腰にしびれや痛みを起こす病気です。

ロコモのチェックをしてみよう

「自分はロコモになっていないか?」を判断する目安となるチェック項目があります。
下の7つの項目のうち、当てはまるものがあるかチェックしてみてください。

※図は「公益社団法人 日本整形外科学会 ロコモパンフレット2015年度版」を加工して作成

いかがでしたでしょうか?この7つの項目のうち、ひとつでも当てはまればロコモの可能性がありますので、お近くの整形外科等にご相談ください。

もし、今はロコモではない場合でも、年齢とともに運動器の機能は衰えてしまいますので、日ごろから予防に努めることが重要です。

では、ロコモの予防や、ロコモを進行させないようにするためには、どうすればいいのでしょうか?次の章から、具体的にみていきましょう。

ロコモの予防方法1 食事で低栄養を防ごう

「高齢者はあまり動かないし、小食でも大丈夫」と考えている人も多いようです。でも、そんな思い込みから、低栄養を引き起こしてしまう場合もあります。ロコモを予防するには、低栄養を防ぐ「食事」が大切です。

低栄養を防ぐための食事のポイントは2つあります。それは、「筋肉を増やすこと」と「骨を強くすること」の二つです。では、どのような食事をすればよいのでしょうか。

その1 筋肉を増やすためには

私たちの身体は、筋肉を構成するたんぱく質を使ってエネルギーを産み出そうとします。筋肉がエネルギーとして使われるので、食事をきちんと摂らないと、結果的に筋肉量が減ってしまいます。

筋肉が減らないようにするためには、エネルギー源となる炭水化物や脂質、たんぱく質を、1日3回の食事でしっかり摂ることが大切です。

ビタミンB6は、たんぱく質の分解や合成を手助けします。例えば牛乳にバナナを加えてバナナミルクにしたり、ヨーグルトにキウイをいれたり、2つ以上の食材を組み合わせて摂る工夫をしましょう。筋肉は歳を重ねるごとに減っていきますが、きちんと栄養を摂ることで、筋肉の減少を予防することができます。

その2 骨を強くするためには

骨を強くするために大事なのは、「カルシウム」と「ビタミン」です。カルシウムは、皆さんもご存知の通り、骨をつくる材料のひとつです。

日本人の食事摂取基準では、50歳以上の男性は1日に700mg、女性は650mgのカルシウムを摂ることが勧められていますが、現状は、男女ともに毎日200mg程度のカルシウム摂取不足といわれています(3)

また、カルシウムと合わせてビタミンを摂ることも大切です。例えば、ビタミンDは腸でのカルシウムの吸収を高め、ビタミンKは骨の形成や骨質の維持する働きがあります。

これらの栄養素を毎日の食生活で無理なく組み合わせて摂るように心がけましょう。

なお、リンやカフェイン、塩分の摂りすぎには注意が必要です。リンを過剰に摂ると、カルシウムの吸収を妨げてしまいます。また、塩分やカフェインの摂りすぎはカルシウムを尿と一緒に体の外へ出してしまう場合があります。

ロコモの予防方法2 適度な運動をしよう

ロコモを予防するには低栄養を防ぐ「食事」のほかに、「運動」も重要なポイントです。まず、「立つ」「歩く」!ロコモ予防はここから始めましょう。

最初は、軽い「片脚立ち」から始めましょう。転倒しないように、必ずつかまるものがある場所で行ってください。「スクワット」や「かかと上げ」も下肢の筋力をつけるために効果的です。また、ウォーキングやラジオ体操を行うのも良いでしょう。

こうした運動は、無理をせず継続して行うことが大切です。

早めの対策が重要

ロコモの原因には、「加齢」「運動不足」「肥満」「痩せすぎ」「外出機会の低下」などさまざまなものがあるというお話をしましたが、ロコモの三大原因疾患(骨粗しょう症、変形性関節症、脊柱管狭窄症)も忘れてはいけません。

これらは、特に痛みを切り離して考えにくい運動器疾患で、放置すると痛みが慢性化し症状も悪化します。早めの対策が重要です。

痛みを感じることによって運動するのを避けるようになってしまうと、運動器の機能がさらに低下し、寝たきりや介護が必要な状態になってしまう確率が高まります。

これは、健康寿命を延ばすことにとって最大の敵です。痛みは我慢せず、薬物療法と運動療法とを行うようにしましょう。

では、ここで、ロコモの三大原因疾患の薬物療法の一例をご紹介します。

もし、治療をしているなかで、お薬についてわからないことがあれば、薬剤師にお聞きください。

最後に

人生100年時代といわれる現在、長い人生を、より健康でいきいきと過ごすためには、運動器の機能をいかに維持・向上するかが重要です。

そこで、日本調剤(株)ではロコモの啓発・予防を進めていくため、薬局発のオリジナルロコモ予防トレーニング「3分でできるちょこっとロコモ予防トレーニング『ちょこトレ』」を開発しました(4)

1つの運動につき約3分という簡単手軽なプログラムで、太ももや股関節まわりなどを鍛える全5種類のトレーニングとなっています。日本調剤の薬局にあるテレビモニターでトレーニングの動画を放映していますので、お薬の待ち時間などに是非お試しください。

健康寿命を延ばすためにも、バランスの摂れた食事を心がけ、また、運動を習慣にしてロコモ予防に努めましょう!

参考資料

(1)日本整形外科学会 新概念「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」
https://www.joa.or.jp/public/locomo/
(2)厚生労働省 健康21(健康寿命の延伸と健康格差の縮小の実現に関する目標)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/
-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/
sinntyoku.pdf

(3)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)の概要」
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou
-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenk
ouzoushinka/0000041955.pdf

(4)日本調剤(株) 薬局の待ち時間に、ちょこっとロコモ予防♪オリジナルトレーニング「ちょこトレ」を開発‼‼
https://www.nicho.co.jp/corporate/info/18414/

※当コンテンツ内の画像はイメージです。

「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。

前の記事 次の記事