知っ得!薬剤師コラム

2018.11.05

薬に頼りすぎはNG?!便秘

「便秘」と聞くと、身近な問題に感じられる方も多いのではないでしょうか。実は、日本人の7~8人に1人が、便秘の自覚症状があるというデータがあります(1)

便通は「健康のバロメーター」と言われるくらい、私たちにとって重要な生理現象です。

今回は、便秘について基本的なところからお話したいと思いますので、ぜひご自分の体と向き合ってみてください。

「便秘」の定義って?

便秘とは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」のことを言います(2)

しかし、便通には環境や体質などの個人差が大きく影響するため、「何日排便がなかったら便秘」という明確な定義は存在せず、必ずしも毎日排便がなければならない、というわけではありません。1~2日排便がなくても、不快感がなければ便秘とはいえないですし、毎日排便があっても排便量が少なく、不快感や残便感が残るようなら便秘であると言えます(3)

毎日排便があってもなくても、排便時に苦しい、便がスムーズに出ない、不快感、お腹の張り、腹痛などがあって、日常生活に支障をきたすような場合には便秘を疑いましょう。

なぜ便秘になるの?

便秘の原因は人によって異なりますが、大きく分けて4種類あります。

このように、便秘の原因はさまざまですが、特に高齢者や腹筋力の弱い女性が便秘になりやすいとされています。

また、習慣的に排便を我慢したり、下剤・浣腸を乱用したりしている場合にも排便が起こりにくくなり、慢性的な便秘になってしまいやすいです。

便秘を放置するとどうなる?

「便秘になっても、特に病気でもないから・・・と放置してしまう方もいらっしゃいますが、便秘を放置すると体にさまざまな不快な症状があらわれます。

腸に老廃物が溜まったまま放置してしまうと、腸内で有害物質や毒素が発生し、それが血管から吸収されることで血液中にめぐります。その結果、肌荒れや吹き出物、腹痛、腹部膨満感、胸やけなどさまざまな症状が現れます。

便秘を予防するには?

規則正しい生活と食事、適度な運動、そして排便のリズムを作ることが大切です。十分な水分補給と、朝食をきちんととること、排便を我慢しないことが重要です。

その他、精神的なストレスの積み重ねにより、自律神経の機能が乱れてしまうことで排便習慣が乱れることもありますので、適度にストレスを発散することも大切です。

便秘になってしまったら?

便秘がちな方は、生活習慣に問題がある方も少なくありません。そのため、まずは生活習慣を改善し、排便のリズムを作りましょう。特に朝食をとることは重要です。朝食をとることで腸の働きが活発になります。

水分摂取の他、穀物、芋類、果物、野菜など食物繊維の多いものを食べるようにし、朝食の後に排便する習慣を身に付けましょう。

また、適度に運動をすることで腸の動きを促す効果があります。排便の際に使う腹筋を鍛える運動をすることで、便を押し出す力がつき効果的です。また、ストレスは排便習慣を乱す原因となりますので、適度な気分転換を心がけましょう。

生活習慣を改善しても便秘が続くような場合には、お薬を使うのも一つの方法です。次の章では、便秘薬についてご説明したいと思います。

便秘薬ってどんなものがあるの?

生活習慣の改善を試みても便秘が続いてしまうときは、便秘薬を使うのも一つの手です。便秘薬には様々な種類がありますので、ご自身の状態に合ったものを選ぶようにしましょう。今回は、よく使用される2種類の便秘薬についてお話します。

 

●腸に刺激を与えるタイプ

市販品としても入手可能なため、多くの方に使われます。しかしながら、このタイプの便秘薬はすぐに効果が出るため習慣になりやすく、使用するうちに腸が刺激に慣れてしまい、次第に効果が出にくくなってきます。

そのため、お薬は、必要な時に服用するのみにとどめ、なるべく刺激に頼らず排便できるように腸の中を整えていく必要があります。

 

●便をカサ増しすることで排便を促すタイプ

使用を続けて効果が出にくくなるようなこともなく、子供から高齢の方まで幅広く使われています。

この中でマグネシウムを含むものに関しては、まれに血液中のマグネシウムの濃度が高くなりすぎて、悪心・嘔吐、脈が遅くなる、筋力が低下するなどの副作用が起こることが報告されています(4)

高齢者や重度の腎臓・心臓の病気を患っている方は特に注意し、医師の指示のもと服用しましょう。

このように便秘薬は、あくまでも一時的に症状を緩和するだけで、根本的に治すものではありません。まずは、生活習慣など根本的な便秘の対策をした上で、一時的に使用するのが望ましいです。

また、便秘薬には市販品も多く、どれを使用すべきか迷ってしまいがちです。初めて使用する時、どういったタイプのお薬を使えばよいか、自己判断せず薬剤師に相談しましょう。

なお、お薬を使用しても排便状態が改善しない場合や、血便、腹痛、吐き気などが続く場合には、背後に思わぬ病気が隠れている可能性もありますので、一度医療機関を受診するようにしましょう。

最後に

便秘は、とてもありふれた症状です。ちょっとした便秘の場合、まぁいいか…と思ってしまいがちです。しかし、それを放置することによって治りにくくなったり、悪化してしまったりなど、毎日の生活が苦痛なものとなってしまいます。

便秘の改善には、食生活や適度な運動、生活リズムの見直しが効果的ですので、無理なく毎日続けられることから始め、少しずつ便秘解消を目指しましょう。

一番注意してほしいことが、便秘薬は市販でも簡単に購入することができるため、次第に便秘薬に頼った生活を送ってしまいがちになることです。お薬は、便秘を根本的に治すものではありません。

腸が刺激に慣れてしまって次第に効果が出なくなり、ますます薬の使用量が増えていった結果、腸の機能はどんどん低下していき、便秘が改善しなくなるという悪循環をたどってしまいます。便秘薬といえど、「薬」なのだ、ということを忘れず、自己判断で使用せず、医師あるいは薬剤師へ相談するようにしてください。参考資料

(1)厚生労働省 平成25年 国民生活基礎調査
https://www.joa.or.jp/public/locomo/
hw/k-tyosa/k-tyosa13/dl/16.pdf

(2)慢性便秘症診療ガイドライン
(3)愛知県薬剤師会 薬事情報センター「便秘」
http://www.apha.jp/medicine_
room/entry-3531.html

(4)日比紀文・吉岡政洋(2007)『便秘の薬物療法』株式会社協和企画

※当コンテンツ内の画像はイメージです。

「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。

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