知っ得!薬剤師コラム

2018.06.04

3人に1人!?実は身近な高血圧症

「4,300万人」、何の数字だと思いますか?実は、これは日本での高血圧症の推定患者数(1)です。実に日本人の約3人に1人。しかし実際に治療を受けているのはその一部と言われています(1)。というのも、高血圧症は自覚症状があまりないため、自身で気付くことが難しいからです。

そして、高血圧症は放っておくと、知らないうちに悪化して、重篤な合併症などを引き起こすことがあります。今回は、気付いていないが故に「自分は関係ない」と思っている方にこそ気付いてもらいたい、という思いから、高血圧症についてお伝えしたいと思います。

高血圧症って何?

そもそも血圧とはなんでしょうか。血圧とは、血管の中を流れている血液が血管を押し広げようとする圧力です。

高血圧症は、そうした血圧が高くなり診断基準(最高血圧が140mmHg あるいは、最低血圧が90mmHg)を上回った状態を指します(1)(2)

高血圧症は自覚症状があまりなく、痛みや苦しみ、つらさといった感覚がまずありません。そのため、最初は自身で気が付くことが難しい病気です。

合併症は脳や心臓にも!?

高血圧の状態が続くと、血管は、血圧に対抗しようと(破裂しないように守ろうとして)だんだん固くなっていきます。

すると血管は弾力性が失われていき、やがて動脈硬化とよばれる状態になります。その結果、狭心症、心不全、脳梗塞、脳出血などの合併症が引き起こされる恐れがあります(1)(2)(3)

なぜ高血圧症になってしまうの?

日本人の高血圧の最大の原因は、塩分のとりすぎ(2)です。

体内では、塩分などの濃度が一定に保たれるようになっており、塩分を多く摂ると、それに伴って体内の水分量も増え、結果的に血圧の上昇が引き起こされます。

この他にも、肥満、過剰飲酒、精神的ストレス、運動不足、野菜や果物(カリウムなどのミネラル)不足、喫煙なども原因になっています。特に男性では肥満が原因として多くなっています(1)(2)

生活習慣の改善で予防!メタボは大敵!

高血圧症の予防で欠かせないのは、高血圧の最大原因である塩分の摂取を減らすことです(2)。薄味にして、醤油・ソースなどの調味料は極力控えるようにして下さい。

また、野菜をたくさん食べることも有効です。体内の余分な塩分を体の外へ排泄する働きをする「カリウム」の摂取が増えることになり、結果的に高血圧症の予防につながるからです。

そして、高血圧症の予防には、肥満などによって内臓脂肪が増えている「メタボ(メタボリックシンドローム)」の予防も大事です。

というのも、メタボになると、高血圧症などの生活習慣病になりやすくなり、さらに動脈硬化や合併症も起こりやすくなるからです(2)。そのため、高血圧症を予防するには、血圧のみならずメタボにならないように生活習慣改善を心がけることが大事なのです。

気付けない高血圧症に気付くために

高血圧は自覚症状がほとんどなく自分では気付かないので、定期的に(できれば毎年1回)健康診断を受けて血圧を測定することが重要です。また、家庭用血圧計などを利用することでも計測可能です。

高血圧症の治療って?

高血圧症の治療は、薬の治療や生活習慣の改善によって行います。

薬の治療で、多くの合併症が予防出来ることが明らかとなっています。例えば、脳卒中は薬の治療で30~40%減ります(3)

高血圧症自体は症状があまりないため、ついつい薬の服用を止めてしまったりすることが多いとされています。しかし、合併症予防のために、医師の指示通り服用を継続することが大切です。

薬にはいくつかの種類があります。効果や副作用など気になる点やわからないことがありましたら、いつでも薬剤師にお尋ね下さい。

また、薬の治療と平行して、予防のときと同じように、食塩の制限、肥満の改善、野菜や果物の摂取に加え、運動、飲酒の制限、禁煙などの生活習慣改善が大切です(1)(3)

少しでも気になった方は…まず「測ってみる」!

日本でとても多い高血圧症は、症状があまりないため本人が気づかないうちになっていることがあります。そのため毎年の健康診断等で定期的に血圧を測定することが重要です。

また、高血圧症はメタボによってなりやすくなり、さらに動脈硬化や合併症にもなりやすくなります。適切な薬の治療が大切であると同時に、生活習慣を改善していくことも重要です。

この記事を読んで、「あれっ、自分は大丈夫かな?」と少しでも気になったら、まずは血圧を測ってみるところから始めてみましょう。

参考資料

(1)日本高血圧学会.高血圧治療ガイドライン2014
http://www.jpnsh.jp/data/jsh2014/
jsh2014v1_1.pdf
(2)厚生労働省.e-ヘルスネット「高血圧症」.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/
information/metabolic/m-05-003.html
(3)国立循環器研究センター.循環器病情報センター「高血圧」
http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/
kin-en-sien/manual2/dl/manual2.pdf

※当コンテンツ内の画像はイメージです。

「知っ得!薬剤師コラム」では日本調剤の薬局でお配りしている健康情報誌 日本調剤新聞「かけはし」から情報を抜粋して掲載しています。

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